オイラー予想(オイラーよそう、Euler's sum of powers conjecture)とは、スイスの数学者レオンハルト・オイラーが提唱した、フェルマーの最終定理を発展させた数学的予想である。現在では、反例によってこの予想は偽である(正しくない)ことが証明されている。
予想の内容
オイラーはフェルマーの最終定理の n = 3 のとき、すなわち
- x3 y3 = z3
を満たす自然数の解 (x, y, z) は存在しないことを証明した。 ここから、フェルマーの最終定理を拡張して、
- x4 y4 z4 = w4
を満たす自然数の解 (x, y, z, w) は存在しない、と予想した。
同様に
- x5 y5 z5 w5 = v5
- x6 y6 z6 w6 v6 = u6
を満たす自然数の解も存在しない、とした。
すなわち、n > 3 とすると、n − 1 個の n 乗数の和を1個の n 乗数で表すことはできないということを示唆した。 これが、オイラー予想である。
歴史
オイラーの発表以降、比較的小さな自然数では反例を見つけることができず、長い間正しいと信じられてきた。
しかし1966年にレオン・J・ランダーとトーマス・R・パーキンによって n = 5 の場合の反例として解 (27, 84, 110, 133, 144) が発見され、275 845 1105 1335 = 1445 が成り立つことが確認された。これには当時世界最速のスーパーコンピュータであったCDC 6600が用いられた。
この発見から n = 4 の場合も反例がある可能性があるとして研究が続けられ、1986年にハーバード大学のノーム・エルキーズ(Noam Elkies)が、楕円曲線論とコンピュータを用いて発見した。その反例は 26824404 153656394 187967604 = 206156734 という複雑なものだった。この発見と同時に解は無限に存在することも確認され、約200年間未解決となっていたオイラー予想は、否定的に解決された。
また、2004年にはジム・フライによってn=5の場合の反例852825 289695 31835 555 = 853595が発見された。
例
箇条書きされている式は、n − 1 個の n 乗数の和を1個の n 乗数で表すオイラー予想の反例である。 そうではない式は、n 個の n 乗数の和を1個の n 乗数で表すオイラー予想に従う例である。
k = 4
- 958004 2175194 4145604 = 4224814 (R. Frye, 1988)
- 304 1204 2724 3154 = 3534 (R. Norrie, 1911)
(R. Norrie によって最小の解であることが示されている。)
k = 5
- 275 845 1105 1335 = 1445 (Lander & Parkin, 1966)
- 195 435 465 475 675 = 725 (Lander, Parkin, Selfridge, smallest, 1967)
- 215 235 375 795 845 = 945 (Lander, Parkin, Selfridge, second smallest, 1967)
- 75 435 575 805 1005 = 1075 (Sastry, 1934, third smallest)
k = 7
- 1277 2587 2667 4137 4307 4397 5257 = 5687 (M. Dodrill, 1999)
k = 8
- 908 2238 4788 5248 7488 10888 11908 13248 = 14098 (S. Chase, 2000)
関連項目
- ランダー・パーキン・セルフリッジ予想
参考文献
![[323] オイラーの公式 展望と証明とその他もろもろ YouTube](https://i.ytimg.com/vi/5VBxhA8ROzc/maxresdefault.jpg)


